ハイリスク出産のひとつに前置胎盤があります。
前置胎盤がハイリスクと呼ばれる理由……それは誰にも予測できない大量出血です。
大量出血が起こると、お腹の赤ちゃんのみならずママの命も落としかねません。なぜ前置胎盤は大量出血が起こるのか? 前置胎盤の仕組みとともに、私が医師から説明された内容をわかりやすく説明しますね。
前置胎盤で大量出血が起こる原因、それは胎盤と子宮のごくわずかなズレ
前置胎盤は痛みもないまま、“ある日突然大量出血が起こる確率が非常に高い病気”です。
この出血の原因ははっきり決まっていません。しかし、子宮にしっかりと根をはった胎盤との間に“ごくわずかなズレが生じる”ことで前置胎盤になりやすいです。
このズレが起きる瞬間は本当に突然で、自分でも予測することはできません。
産婦人科のプロである医師でも常に気を張らせていなくてはいけないくらい、恐怖の瞬間なのです。
原因で考えられているものが、
- 高齢妊娠
- 喫煙
- 多産婦(ひとり以上のお産経験)
- 双子、三つ子などの多胎児妊娠
- 帝王切開経験者
- 子宮手術の経験がある
- 流産の手術や人工妊娠中絶の経験
帝王切開はひん度が多いと癒着胎盤の可能性も高くなります。
出典:日本産科婦人科学会※1
前置胎盤とは子宮口に胎盤がかぶさった状態
前置胎盤とは胎盤が正常より低い位置にあり、子宮口(子宮の出口)にかぶさった状態です。
通常の胎盤は風船のようにふくらんだ、子宮の天井側に位置しています。しかし、なんらかの原因によって、子宮口(下側)に降りている状態です。
前置胎盤になるひん度は全分娩のうち、0.3%から0.6%と発表されています。
そのうち、胎盤と子宮が癒着してしまいはがれない「前置癒着胎盤」(ぜんちゆちゃくたいばん)になるリスクが5%から10%と日本産婦人科学会が発表しています。
出典:日本産科婦人科学会※1
前置胎盤の種類は3つに分類されています
子宮口に胎盤がどのようにかかっているかで3つに分類されています。
- 全前置胎盤(ぜんぜんちたいばん):胎盤が完全に内子宮口をおおっている状態。(※2cm以上)
- 部分前置胎盤(ぶぶんぜんちたいばん):胎盤の一部(※2cm未満)が内子宮口にかかっている。 一部前置胎盤(いちぶぜんちたいばん)ともいいます。秋篠宮紀子さまが悠仁さまをご出産されたときに部分前置癒着胎盤と診断されていました。
- 辺縁前置胎盤(へんえんぜんちたいばん):胎盤の端がほんの少し(※ほぼ0cm)内子宮口にかかっている。
前置胎盤とは違いますが、低置胎盤(ていちたいばん)とよばれる症状があります。
胎盤と子宮口の距離が2cm未満だと診断され、通常よりも胎盤が低い位置に形成されてしまいます。
経膣分娩は可能ですが、リスクは高くなります。
画像引用先:プレママタウン※2 前置胎盤の経験談も掲載されています。
前置胎盤の症状は? なぜ胎盤と子宮の間にズレができると大量出血してしまうのか?
前置胎盤は無症状の場合が多いです。しかし、大量の性器出血や腹痛のない突然の性器出血(警告出血)が確認できた場合、救急で病院に行く必要があります。
正常妊娠の場合、胎盤は子宮口とは真逆の位置に根付いています。
お腹の中では胎盤が上部、子宮口は下部にあるとイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。
画像引用:プレママタウン※2 妊娠初期から後期まで段階ごとに病気などをわかりやすく伝えています。
胎盤が根付くであろう子宮の上部はとても収縮力が強く、出産時に起こる出血をこの収縮力を使って止めようとし、大きくなった子宮を元通りにする仕事も担っています。
一方、子宮の下部にある子宮口はそこまで伸びが良くありません。
子宮口は赤ちゃんの産まれてくる時に扉の役割をする部分なのです。
このように子宮内にも伸びがよい部分、悪い部分があり、それぞれ時と場合に応じた仕事を抱えています。
前置胎盤はこの仕組みを大きく崩す病気です。
本来の子宮上部ではなく、子宮口付近、もしくは子宮口をおおいかぶさるように胎盤が根をはってしまいます。
胎盤は赤ちゃんとママとの命のパイプと言えるくらい重要な存在で、大量の栄養や血液を運んでいます。
そんな胎盤が伸びの悪い子宮口にあるとどうなるでしょう?
- もしも陣痛が起こったら?
- もしも胎盤が少しでも剝がれてしまったら?
これが前置胎盤の大量出血の原因なのです。お腹が張りやすい28週以降に増加する傾向があります。
出典:日本産科婦人科学会※1
前置胎盤は何週ころからわかるのか?治る可能性はある?
診断には「経膣超音波検査」(エコー検査)をおこないます。妊娠中期で医師から前置胎盤といわれても確定ではありません。
日本産科婦人科学会の指針は、妊娠24週以降、31週末までに確定診断をおこないます。
お腹がおおきくなるにつれて子宮も大きくなります。このときに、胎盤が上がっていき通常の胎盤の位置になる例があります。
改善した症例は
妊娠15週~19週の妊婦:88%
妊娠20週~23週の妊婦:66%
妊娠24週~27週の妊婦:51%
早期ほど前置胎盤が改善していると、『アスクドクターズ』で監修された落合病院副院長近藤恒正先生が伝えています。
出典:アスクドクターズ※3
お薬などで治るというわけではありません。
前置胎盤の確定診断は31週末までになります
妊娠中期に「前置胎盤疑い」となった場合も安静に過ごすのが1番です。
妊娠中でも働くプレママも多いと思います。しかし、できるだけ早期に退職することをオススメします。
くわしくはこちらをご覧ください。>危険度NO.1の前置胎盤になったら仕事続ける?やめる?経験者が物申す

出典:日本産科婦人科学会※1
子宮口付近で出血が起こると止めることができない!
胎盤と子宮の間にごくわずかなズレが生じる原因は陣痛だけではありません。
陣痛は妊娠中に何度となく感じるお腹の張りが一定の間隔になり、これに痛みが付くことによって起こります。
この痛みが付く以前のお腹の張りも、ズレを生じる原因となります。
むしろ陣痛よりもお腹の張りが原因で大量出血を起こすといってもよいでしょう。
お腹の張りは子宮内の収縮です。
子宮内の収縮=胎盤と子宮の間にズレが起こる可能性がある。結果的に大量出血の恐れ「大」になる。
こういったメカニズムです。
先ほどもご紹介しましたが、
- 胎盤には大量の血液を運搬するパイプの役割があります。
- 子宮口付近は伸びが悪く、出血を止めるような動きはできません。
このふたつの最悪な状況が、前置胎盤の最も恐れる大量出血を引き起こします。
前置胎盤の大量出血を防ぐためにはお腹の張りを抑えるのみ!
前置胎盤の大量出血のリスクを少しでも減らすためにママが唯一できることは、お腹の張りを1回でも減らすことです。
お腹の張りが1回起こるたびに出血の抽選会をおこなっているようなものだと考えてよいでしょう。
お腹の張りを減らすためには入院して24時間点滴を行います。
お腹の張り止め点滴と入院生活については、こちらの記事にくわしく書いています。
くわしくはこちらをご覧ください。>前置胎盤の入院生活は?3ヶ月の大部屋入院経験者がアドバイス!

この点滴をおこなうのとおこなわないのではリスクが全く違ってきます。ほとんどの前置胎盤を抱えたママがしなくてはいけない大切な処置です。
前置胎盤は帝王切開での分娩になる?
前置胎盤は母体と赤ちゃんの命が危険になる場合もあり、赤ちゃんが体外生活可能になる時期に帝王切開になります。
しかし、大量の出血がある場合は緊急の帝王切開になります。
臨月まで出血がなく経過する場合もあります。この場合、医師と相談して帝王切開の日時が決まります。
自己血貯血をして大量出血への対応をします
大量出血への対応として、自分自身の血液のストックをしておきます。これを自己血貯血(じこけつちょけつ)とよびます。
ただ、手術や大量出血にそなえて輸血の確保は必要です。
最後に
前置胎盤は妊娠中のトラブルの中でも0.3%から0.6%と非常にまれな病気です。
ただし、自分だけは絶対に大丈夫ということはありません。前置胎盤の仕組みと大量出血の怖さを理解し、無事に赤ちゃんを迎えましょう!!
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くわしくはこちら>ファッション雑誌読み放題アプリ3つを比較。女性誌に特化するかドラマも視聴するか

出典:日本産科婦人科学会※1
画像引用先:プレママタウン※2
出典:アスクドクターズ※3
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